説明
山口大学医学部附属病院・血液内科では、白血病、悪性リンパ腫、再生不良性貧血などの血液疾患に対する診療を行っています。中でも、難治性の血液疾患に対する同種造血幹細胞移植は、根治を目指す治療として力を入れているものの一つです。
今回は、この同種造血幹細胞移植についてご紹介します。

■同種造血幹細胞移植について
急性白血病などの難治性の血液疾患において根治を目指す治療として行う同種造血幹細胞移植ですが、移植を行うためには、まずドナーさんのHLAという白血球の型が、患者さんのものと一致する必要があります。HLAが一致するのは、一般の日本人の中では、数百から数万分の1の確率です。

■同種造血幹細胞移植の方法
移植は、事前に患者さんへ超大量の抗がん剤投与や、全身放射線照射により白血病細胞はもちろん、患者さん自身の造血および免疫機能を破壊した上で行う必要があります。しかし、患者さんの年齢や体力、合併症などにより、強力な前処置が難しい場合には、強度を弱めた前処置によるミニ移植を選択します。移植後、ドナーさんの免疫力が患者さんに根付くことにより、ドナーさん由来の免疫力によって白血病細胞が駆逐される、いわゆるGVL効果も発揮されます。そして、移植する細胞源によって、骨髄移植・末梢血幹細胞移植・臍帯血移植に分類されます。骨髄移植は、ドナーさんから手術室で骨髄採取を行い、前処置をした患者さんに輸注します。末梢血幹細胞移植は、本来骨髄の中にしかない造血幹細胞を、白血球を増加させるG—CSFという薬剤をドナーさんに投与することで、血液中に動員して採取することで行います。こちらは、血液を体外循環させ、成分分離装置にかけて採取を行います。
臍帯血移植は、出産直後の臍帯、いわゆるへその緒から採取を行います。採取によるドナーさんへの負担がないのがメリットですが、採取できる造血幹細胞の数に限りがあり、生着不全や感染症などの課題がありましたが、近年は従来の骨髄移植と遜色ないまでに成績が向上しています。

■HLA半合致移植
同種造血幹細胞移植は、様々な研究や臨床データの蓄積により進歩し、新たな治療法の開発も進んでいます。最近では、HLAの型が半分合っていれば実施可能なHLA半合致移植も比較的安全に行われるようになりました。これは、免疫抑制効果の強い抗がん剤を移植後に投与するという新しい方法で実現可能となりました。
普及が進めば、ドナーさんが見つかる可能性が高くなるので、今後注目の治療法です。

(おわりに)
山大病院は県内唯一の同種移植実施施設であり、関連病院とも協力しながら、新しく建設されたA棟のクリーンルームにおいて診療にあたっています。医師、看護師、コメディカルスタッフ一同で、患者さんやご家族が安心して治療を受けられるようにサポートしていきます。

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