症例:70代女性

主訴:右上腕痛
現病歴:
 数か月前より、全身倦怠感、食欲低下、体重減少、背部痛あり
 4時間前より、右上腕にずきずきする痛みが出現

既往歴:特記事項なし

身体所見:右上腕の腫脹あり

X線検査:溶骨性変化を伴う右上腕の骨折あり

CT検査:脊柱、肋骨、仙骨、骨盤に複数の溶骨性病変あり
     リンパ節腫脹や腫瘍性病変は認められず

血液検査:血清蛋白電気泳動、及び免疫固定法では軽度のM蛋白あり(IgMλ 1.6)
     血清遊離軽鎖、尿蛋白電気泳動、血清β2ミクログロブリン、通常の腫瘍マーカーはすべて異常なし

骨髄検査:形質細胞 0%
     転移性腫瘍の所見あり
     (免疫組織化学染色で、cytokeratin AE1-AE3、GATA3、oestrogen receptor、HER2が陽性)

診断:乳癌多発骨転移(occult cancer)による病的骨折

ポイント:
・病的骨折は、大腿骨転子部、上腕骨骨頭と骨幹端の接合部、椎骨に多い

・病的骨折では、多岐にわたる原因疾患の特定が重要である

・乳癌の骨転移の多くは溶骨性だが、15-20%は造骨性

・溶骨性の骨転移の多くは、腫瘍が産生する副甲状腺ホルモン関連ペプチドが関連している

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