がんQ&Aシリーズ 25



平成26年5月から平成30年3月までテレビ埼玉で放送されていた「連続テレビセミナー がんQ&Aシリーズ」のがんセンター医師等出演分を配信するもの。

ーーー以下、動画字幕ーーー
○司会 5月31日は世界禁煙デーです。たばこは、がんやそのほかの病気を引き起こす大きな原因になっていると言われています。
 では、現在、日本ではどのくらいの方が習慣的に喫煙をしているかといいますと、こちらです。男性の32.2%、女性の8.5%です。
 今回のがんQ&Aでは、喫煙とがんの関係について、埼玉県立がんセンター呼吸器内科の酒井洋さんにお話を伺います。
 酒井先生、よろしくお願いいたします。

○酒井 よろしくお願いします。

○司会 喫煙する人の割合は、近年、横ばいで減ってはいないということなんですが、喫煙が健康に与える影響を教えてください。

○酒井 たばこの煙には多くの有害物質、発がん性物質が含まれていまして、健康に与える影響というのは肺だけではなくて循環器系、その他神経系とか、全身に影響を及ぼします。
 たばこの煙というのは、喫煙している本人だけではなくて、周りの人に影響を非常に及ぼします、それは受動喫煙といいますけれども。ですから、個人の嗜好の問題ということだけではありません。

○司会 吸っている本人の全身への影響、それから吸っていない周りの方への影響というのがさまざまにあるということですね。
 喫煙によるダメージといいますと、まずは肺を思い浮かべますね。

○酒井 長年吸いますと、正常な肺を壊してしまうんですね。その一番壊れているのは、肺気腫という病気になります。正常な肺は非常にきれいでピンク色をしているんですけれども、長年喫煙しますと、有害物質が沈着したりして非常に真っ黒になって、そして肺が壊れてきてしまうと、そういう方の中から肺がんが発生するということになっています。
 肺がんは当然そうなんですけれども、それ以外にも、例えば喉とか鼻とか、そういうところにも有害物質は沈着します。ですから、喉頭がんとかになることもあります。あと咽頭がんですね。それから体の中に吸収されて、それ以外にも、膵臓がんとか腎がんとか膀胱がんになるということがわかっています。

○司会 たばこの煙にさらされる部分は、どうしてもがんになりやすいということなんですね。

○酒井 そうですね、はい。

○司会 発がんのリスクというのは、これは吸っている量でも変わるんでしょうか。

○酒井 はい。吸っている量だけではなくて、やはりどれだけの期間、吸っていたかという、そういう指標が非常に大事になっています。我々は、吸っていた本数掛ける年数を喫煙指数というふうに呼んでしまして、それの多い少ないで発がんのリスクを判定しています。

○司会 例えば1日20本、通常1箱ですね。それを20年間吸っていた人は、20掛ける20で400という指数になるんですね。

○酒井 はい、そうですね。この喫煙指数が大体400を超えますと、肺がんの危険域に達していまして、発生しやすくなります。また、600以上になりますと、もうかなり肺がんの高危険群ということでありますので、テレビをごらんになっている皆様方の身内の方で、この掛け算をして400、500、600という、そのような方が周りにいましたら、非常に注意しなければいけません。
 がんになった後、治療するわけですけれども、手術の直前まで禁煙できないで、全身麻酔をかけて大きな手術をしますと、手術の後の合併症が非常にふえてしまうということがわかっています。

○司会 喫煙でがんのリスクが高まり、それから禁煙できないことによって手術だったり抗がん剤、治療にも影響する、これはもう本当にたばこを吸う方にとっては大変な問題ですよね。

○酒井 そうですね、はい。

○司会 ところで、喫煙は本人だけではなく周囲にも影響すると先ほどお話ありましたが、受動喫煙、これも問題になっていますね。

○酒井 はい、そうですね。非常に問題になっています。海外ではセカンドハンドスモークという、そういう名前で言われているんですけれども、喫煙者の周囲の人が吸い込む副流煙という、そういう煙が出ているんですけれども、それはご本人が吸う主流煙よりも有害物質をたくさん含んでいるというふうに言われていまして、非常に問題であります。
 例えば、夫婦を例にとりますと、ご主人がたばこを吸っていて、奥様は吸っていないご家庭で、その奥さんの肺がん、特に腺がんなんですけれども、リスクが約1.3倍ぐらいふえる、3割ぐらいふえてしまうということがわかっています。

○司会 明らかに周りの方のリスクが高くなるということが証明されているということは、これはもう禁煙というのは自分のことだけではなく、家族のためでもあるということがわかりますね。

○酒井 そうですね。

○司会 ところで、これまで吸っていた方でも、今から禁煙をすれば、例えば10年前に禁煙をしたら、がんのリスクというのは減るものなんでしょうか。

○酒井 はい。よく聞かれるご質問なんですけれども、禁煙期間が長くなればなるほど、明確に発がんのリスクというのは下がっていきます。しっかり禁煙をしていただければ、かなりリスクが下がるということがわかっております。
 この喫煙習慣というのは、病気なんですね。アルコール依存症とかと同じように、ニコチンによる依存症ということがわかっていまして、海外では、その依存症の治療という視点で治療が行われています。

○司会 禁煙なんですが、私の周りでも、トライはするものの失敗してしまうというお話もよく聞くんですが、意志の強さ、頑張ろうという気持ち以外に、何か頼れるものというのはあるんでしょうか。

○酒井 はい。つい数年前から画期的な禁煙治療薬が開発されて、我々、使えるようになりました。その薬のおかげで、大体六、七割の方は禁煙に成功されています。医療機関の禁煙外来で、この薬物を用いた禁煙治療は健康保険を使って可能ですので、ぜひに禁煙をご希望される方は、一度門を叩いてみていただければというふうに思います。
 今年4月からは、その健康保険による禁煙治療の対象が若い方にまで広がってまいりましたので、若い方でも、そのお薬による禁煙治療をすることが可能になりました。

○司会 お医者さんに相談するのも一つの方法なんですね。

○酒井 そうですね、はい。

○司会 自分の健康のためにも、家族のためにも、このニコチン依存症としっかり向き合うことが大切だということがわかりました。
 2人に1人の割合でがんになると言われている現在、少しでもがんのリスクを減らすために禁煙が大切だということがわかりました。
 きょうは、埼玉県立がんセンター呼吸器内科の酒井洋さんにお話を伺いました。
 どうもありがとうございました。

○酒井 どうもありがとうございました。

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