診断チャレンジ 若年発症、反復する心筋梗塞



症例:30代女性

10年前に急性心筋梗塞に対し、バルーン血管形成術
2年前にも急性心筋梗塞を発症しステント留置歴あり
 若年発症の心筋梗塞の原因は不明で、
 DAPT(アスピリン、チカグレロル)中であった

1週間前より、チカグレロルを内服していなかった
本日、歩行中に突然、胸骨下の胸痛と呼吸困難が
                   出現した

診察所見:バイタルサインは正常
     黄色腫なし(眼瞼、四肢伸側)
     心雑音なし、肺音正常

心電図検査:
 洞調律、V2-V5にST上昇、II/III/aVFに異常Q波

血液検査:白血球上昇(12000)
     トロポニンI高値
胸部X線検査:心拡大あり
       胸水、肺浸潤影など認めず

緊急冠動脈造影で、
 左冠動脈前下行枝
  → 近位部に動脈瘤あり、同部位で血栓性閉塞あり
 左冠動脈回旋枝
  → びまん性に動脈瘤あり
 右冠動脈
  → 動脈瘤あり、中央セグメントで部分的閉塞あり

追加問診:小児期に明らかな川崎病の既往なし
     喫煙歴なし、違法薬物使用歴なし
     父親が45歳で心臓突然死
     父方の祖母が40歳で心疾患で死亡

血液検査:脂質検査やHbA1cは正常
     赤沈、CRP正常
     ANA、ANCA、ds-DNA抗体、RFは陰性
尿検査:血尿、蛋白尿いずれもなし

追加身体所見:
 粘膜疹なし、結膜炎や強膜炎なし
 頸部血管雑音なし、橈骨動脈触知良好
 光線過敏性皮疹なし
 触知可能な紫斑なし、皮膚潰瘍なし
 滑膜炎所見なし
 体幹、四肢、頸部に多発性の丘疹あり
 腹部に斑状の皮膚色素沈着あり

皮膚生検(四肢の丘疹):神経線維腫の所見

CT検査:
 大動脈、腎動脈、頸動脈、脳動脈系の異常なし

全身MRI検査:
 1か所の叢状神経線維腫あり、悪性腫瘍なし

遺伝子検査:
 NF1遺伝子のミスセンス変異あり(c.4267A→G)
                 ※ p.Lys1423Glu

診断:神経線維腫症1型
   (NF1: neurofibromatosis type 1)

ポイント:
・NF1は常染色体優性遺伝疾患で、腫瘍抑制遺伝子(NF1)の
 ヘテロ接合型欠失や機能喪失型変異が原因となる

・NF1患者では、腫瘍(特に神経鞘腫瘍)の発生が多く、
 血管異常や心臓弁膜症のリスクも高いことが知られている

・血管障害としては、狭窄や特発性解離、血管攣縮、血栓症、
 動脈瘤などが起こりうる(冠動脈瘤の報告も散見される)

検査機関情報に関して、以下の運用を開始しました

ドコダス【どこで臨床検査をやっているのかまとめ】(名称仮)
 https://seesaawiki.jp/dokodasu/

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