【解説】自宅療養中に酸素が足りない そんな時、酸素缶は?酸素濃縮装置は?



 多くの感染者が自宅療養を強いられる中、「酸素缶」や「酸素濃縮装置」が注目されています。果たして「酸素缶」があれば、息苦しさは軽減されるのでしょうか?「酸素濃縮装置」は誰でも貸し出ししてくれるものなのでしょうか?自宅で酸素が足りない現状がある今、専門家に聞きました。

ホランキャスター:
 インターパーク倉持呼吸器内科院長の倉持仁さんにお話を伺います。よろしくお願いいたします。

良原アナウンサー:
 新型コロナウイルスに感染したお笑い芸人のミカヅキ上田さんが自宅療養中に使っていたというのが、酸素缶です。ドラッグストアなどで購入することができるこの酸素缶。5リットルほどの酸素が入ったものが800円ほどで売られています。ミカヅキ上田さんは「夜になると咳が永遠に止まらない。酸素缶を使ってやっと呼吸ができている状態」というふうに話していました。
 この酸素缶、購入する方が続出していると言うんです。ネット上では「すぐ入院できなくても延命できるように酸素缶5本買った」でしたり「酸素缶を数本注文。感染してもどうせ自宅療養だから」という声が聞かれています。ただその効果について、倉持先生は「コロナで息苦しい場合には適していないと考えてほしい」と懸念を示しています。

ホランキャスター:
 中には、もはや最終手段でといいますか、できることが他にないから最後の手段でこれを買ったという方もいると思うんですが、新型コロナウイルスで酸素缶を使うとき、危険が伴ったりするものなんでしょうか?

倉持医師:
 今のような、どうしようもない状況ではやむを得ない措置だと思うんですね。
 一方で、コロナの肺炎になった場合には、5リットル程度の酸素しか入っていませんのでとても足りないですし、今はまずはきちんとした医療供給体制ができるように、これ以上の感染者を増やさないようにすることが一番大事になってくると思います。

ホランキャスター:
 そうすると購入を考えてる人たちは買わない方がいいですよということなのか、酸素缶について適切な指導というものがありましたら教えてください。

倉持医師:
 パニックにならないようにしながら必要だと思う方は購入すればいいと思うんですね。まずはきちんとした医療供給体制の構築を国・県・自治体がすぐやるべきことだと思います。

井上キャスター:
 大変難しいのは私達の報道の仕方も買い占めに繋がることもよくないですし、実際にスタッフが薬局4店舗ぐらい電話してみると、実際売り切れなんですって。ですからやっぱり個人の判断ってことになりますね、今の先生のお話伺っていると。

倉持医師:
 心配な方は買っておけばいいですし、ただそれだけでは本質的ではなくて、きちんとした医療が受けられるように、まだ感染拡大していない自治体に関しては、今のうちからそういう準備をしておく必要があると思います。

井上キャスター:
 あくまでも抜本的な解決にはならないと。

良原アナウンサー:
 酸素を取り込む装置として「酸素濃縮装置」というものがあります。よく新型コロナの治療で聞く人工呼吸器やECMOとは少し違ったものです。人工呼吸器というのは気管に管を通して直接肺に酸素を送るもの。一方でさらに高度なECMOは体の外に出した血液に酸素を送って二酸化炭素を除いて体内に戻すというものです。人工呼吸器を使うほどではないけれども息苦しい、そういう場合に酸素濃縮装置が使われます。
 仕組みを見ていきます。空気中は窒素が約80%、酸素が約20%という割合です。これを濃縮装置の中で酸素約90%、窒素約10%という状態にします。そして管を通して、口や鼻から高濃度の酸素を吸入します。血中の酸素不足を補って、息苦しさを改善する効果が期待できるというものなんです。
 どんなときにこの装置を使うのかと言いますと、血中酸素飽和度が低下した場合です。呼吸状態が悪化した場合、目安は93以下です。必ずお医者さんが処方して使用します。
 東京は、自宅療養者の数が17日時点で2万2164人いらっしゃいます。当初はこの酸素濃縮装置はお医者さんがいる場所で使われていましたが、東京都は自宅療養者用に貸し出し用としてこの装置を500台確保しているんです。
 ただ、問題もあるようで、この酸素濃縮装置の貸し出しが相次いでいます。500台のうち残りが3、40台になっているということなんです。
 さらに、使い終わった後は、ウイルスの付着を考慮して、5日から10日間は貸し出しができない。使い終わったからといってすぐに次の人というふうにはならないという問題もあるようなんです。

ホランキャスター:
 倉持さん、これ爆発的に増えている陽性者に対して、たくさんすぐに増産できるかというとそうではない部分も企業側にもあるでしょうし、本当に絶望的な状況になりそうで怖いですね。

倉持医師:
 何度も同じことを言っていますが、基本的にはもう感染者を増やさないような強力な自粛をしていただくしかありません。
 それから医療現場、特に私は呼吸器内科の医師なので申し上げますと、酸素飽和度だけが酸素投与の目安ではないんですね。つまり強い呼吸困難などがある場合にも酸素投与をしなければ、次の、例えば心筋梗塞や脳梗塞などを起こしてきてしまうこともありますので、あくまでも都がやるべきことは、こういう機器を配ることではなくて、野戦病院でもいいから、今コロナに感染している方が適切に医療が受けられる体制を構築すること以外ないと思うんですね。

井上キャスター:
 まさに今おっしゃった抜本的な対策というところをもう少し細かく伺いたいんですが、機材不足などのそういう末端のことではなくて、例えば長野の自治体では大学病院とクリニックなど役割分担をして重症者はここで見てください、こちらはこちらでお願いしますという、自治体が交通整理をしている。そういったことも一つ挙げられていますが、医療の構築とおっしゃいましたその部分、もう少し求めるものを細かく教えていただいてもいいですか。

倉持医師:
 今の状況は東京都を中心に、コロナと診療をされてから医療にアクセスできない人、そういう方が90%以上いますから、今は酸素ステーションということではなくて、野戦病院でも何でもいいので、そこで適切に早い段階で薬が使えるような体制を、各自治体が作ると。それ以外、今のこの戦時の状況ですからそれを乗り越えることっていうのはできないんですね。
 先ほど井上さんがおっしゃった、軽症者・中等症・重症と分けて診られているのも、これは感染者がその医療体制のキャパシティ内に収まっているからこそできることで、今はそういう野戦病院の構築と、それからとにかく強いメッセージ、あるいは補償を出して、とにかく感染者をこれ以上出さないように。毎日5000人も感染者が増えていれば、当然保健所が電話だってできなくなるのは当たり前のことですから、自分がそういう目に遭う前に、とにかく家族を守るために強い自粛をお願いしたいと思います。

井上キャスター:
 自粛と医療体制の構築、両輪でということですね。

倉持医師:
 それ以外には今は乗り切る方法はないと思いますね。(18日18:40)

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