コロナ後遺症のメカニズム一部解明 倦怠感はなぜ(2021年10月29日)



 新型コロナの後遺症研究で画期的な成果です。京都大学の上野教授が強い倦怠(けんたい)感がある患者の血液を解析したところ、ウイルスを排除する免疫細胞とその働きを抑える免疫細胞の両方が多いことが分かりました。2つの細胞が同時に多くなることで、免疫の調整ができずに倦怠感につながるとみられています。

 京都大学の上野英樹教授は、新型コロナの後遺症患者の血液から「T細胞」という免疫細胞を解析しました。

 ウイルスは体に侵入すると、細胞に感染します。

 「T細胞」には複数の種類があり、ウイルスに感染した細胞を排除したり、免疫の暴走を抑えたりする役割などを担っています。

 研究の結果、強い倦怠感などがある患者では、ウイルスを排除する機能を持つ細胞とその働きを抑える機能を持つ細胞の両方が、症状が軽い患者より多く作られていることが分かりました。

 京都大学・上野英樹教授:「この細胞がないとなかなかウイルス排除が進まないんですけど、こういう患者さんは若干強く出すぎている可能性がある。免疫の方は何とか抑えようとしているが、車で言うとアクセルと一緒にブレーキを踏んでいる様な状態でうまく体の免疫応答を調整できていないんじゃないか」

 また、嗅覚や味覚障害だけが残る患者については、ウイルスを排除する細胞が極端に少ないことも分かりました。

 上野教授は感染した際に、ウイルスを排除する細胞があまり作られなかったことで、回復後もウイルスの欠片が体の中に残り、症状を引き起こすとみています。

 後遺症のメカニズムの一部が分かったことで、今後、診断や治療に役立つことが期待されます。

 京都大学・上野英樹教授:「診断がしっかりされない、治療も見つからない。どこに行っていいか分からないという現況があると思うので、こういう免疫の乱れがあるんだよというのを明らかにしたうえで、診断の補助になればと考えている。私たち基礎免疫学者ができることは、しっかりとしたエビデンスを出すことだと思う。臨床症状を持った患者さんから得た検体を使って、新しいことを見つけて、そのことが診断につながったりとか治療につながっていくと思う」

 上野教授は今後も後遺症患者の研究を続け、成果をまとめた論文を公表するとしています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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